脳科学的視点から考える不安や恐怖との付き合い方 = 再評価
脳の部位と役割
- 大脳皮質(認知脳):知的活動、思考、知識、理性
- 大脳辺縁系(感情脳):感情
- 脳幹(生存脳):生命活動、身体的機能
ある事象に対してまず最初に反応するのは「感情」である。原始的には、生命を脅かす危機に際しては、大脳辺縁系↔脳幹が連携して(大脳皮質をバイパスして)、生存確率を上げる行動を取るようにプログラムされている。
ところが現代社会では、生命を脅かす事象はほとんどない。むしろ、不安や恐怖の大半は長期的に持続する、もやもやした存在となっている。そこで、大脳皮質(認知)をフル活用して、大脳辺縁系(感情)のサポートすることが鍵となる。
不安や恐怖との付き合い方 = 再評価する
突発的な感情は間違っている場合がある。上述の通り、大脳皮質(認知)を十分に経由していないケースが多いからだ。これを、思考を通して再評価することがひとつのコツである。不安や恐怖を感じた出来事があったなら、少し時間をおいて、立ち止まって、振り返ってみて、もう一度考えてみよう。
再評価の事例など
不機嫌な上司との付き合い方
どこの職場にも不機嫌な上司がいたり、その上司によって職場のモラル(士気)が低下していたりすることはあるだろう。見るからにイライラしてる上司、話しかけるなオーラ前回の上司、いますよね。そのとき、個人として何ができるか(どんな再評価が可能か)を考えてみる。
上司との関わりをなるべくミニマルにする
上司からでないと得られない情報がある、上司の決済がないと進まない、それならば、ただそれだけを目的だと捉えよう。別に、上司の機嫌を取りに行く訳でもない、自分のことを好きになってもらいたい訳でもない。ただ、自分の仕事を進めるために必要なステップに過ぎないのだ。割り切りが大事。
私が世話をする責任は無い
他人は他人であってBackgroundは分からない。何か特別な事情があるのかもしれない。でもね、それは「知らんけど」であって、世話を焼く必要は一切ないのだ。私は私、他人は他人、と距離を取ってしまうのも手だ。
違う世界を持つ
仕事外で別のコミュニティ、別の世界を持とう。上司の不満なんて仕事コミュニティの中での事象に過ぎない。ネガティブオーラから距離を持つ時間を確保しよう。
良い愚痴と悪い愚痴
ネガティブな感情をひとりで処理するのは簡単ではない。声に出して言語化するだけで救われることもある。「この人も同じことを感じていたんだ(自分だけじゃなかったんだ)」の共感で救われることもある。愚痴は全然OKなのだ。
人類の進化の過程を考慮すると、仲間を作ろうと動く力学は極めて自然なことだ。同調圧力も、承認欲求も、外的評価を求めることも、持っていて当然なのだ。ただ、自然なことだからOKというものでもない。他の誰かを傷つけていないか、立ち止まって再評価しよう。
プレゼン前の不安の対処法
「失敗したらどうしよう。」という不安が悪い訳ではない。それがトリガーとなって良い準備につながることもある。が、良い塩梅が必要だ。
仕事において一発勝負であることはそんなにない
またチャンスはやってくるし、プレゼン以外の普段の姿も見てもらえている。総合的なパフォーマンスで判断してもらえることが多い。
自分が思うほど他人は自分の失敗に興味は無い
自分の失敗は人の失敗よりも気にしてしまう傾向が誰しもあるが、実際は他人は自分のことをそんなに気にしていない。
未来は予測不可、今を生きよう
明日何が起こるかなんて誰にも分からない。明日死ぬかもしれない。不安というものは未来思考。根拠の無い「未来」を軸にした感情なのだ。何が起こるのか分からないのが人生だ。そんなことに振り回されるのはもったいない。今に集中しよう。
子育てにおける感情の再評価
子どもが言うことを聞かないときはどうしたらいいか。「お片付けしなさい」と言っても聞いてくれなくて、イライラしたり、怒りが湧いてきたりすることはよくある話だ。
子どもが言うことを聞かない=親に敬意が無い、ではない
実際はお片付けが面倒だったり、まだ遊び続けたかったり、そういったことが理由なのだろう。敬意を持たせるために怒鳴るのはナンセンス。目的は敬意を持たせることではない、お片付けをさせることなのだ。片付けさせるには何ができるか?と考えてみる。例えば片付け競争をしてみよう、という提案も手だ。
親目線の状況を説明してみる
「今どうしても忙しいから隣の部屋で遊んでね。」「ちょっと焦っててイライラして怒っちゃってごめんね。」親だって失敗するのだ。しっかり向き合っている様子を子どもに見せてみよう。
マネジメントにも役立つ再評価
- 怒りを持っても何も変わらない
- 陰口を言っても何も変わらない
- それで自分の評価(自分へのリスペクト)が変わる訳でもない
これをほんの少し意識するだけでも、少し楽になるはずだ。
怒りや不安を抱いてはいけないのか?
ネガティブな感情を感じることは悪いことではない。感情はいきなり現れるもので、その発生を制御できるものではない。怒りや悲しみを抱くこと自体は問題ない。
ネガティブな感情を受け入れた上での次のステップへのアプローチが再評価である
再評価してもなおネガティブな感情が残ってたとしても、それを受け入れる「自分への優しさ」を持つことも重要だ。
まとめ
- 立ち止まって客観的に見てみよう
- 状況を再評価して感情を整理しよう
- 自分の感情を受け入れてあげよう